2014年10月21日火曜日

我が、蹉跌のオーディオファイル #09
MCカートリッジの昇圧

ご承知のようにMCカートリッジは昇圧しないと其の儘では音にならない。

最も有名且つ優れものはEMTオルトフォンで旧型のSPU-Aは未だに根強い人気で、
今はプレミアムが付き、時として法外な値段が付いている。
でもまあ欲しいという向きには10万だって20万だって安い買い物なのかもしれない。
だが、カートリッジだけでは音が出ないから、今迄僕らは昇圧トランスでステップアップした音声信号をアンプを通して聴いてきた。
このトランスがまた箆棒に高価でお決まりのウェスタン製など目玉が飛び出る。
今や滅法を通り越して末法の世界の値段である。「末法高い」などと云う言葉は無いが新語に加えてもよいかもしれない。

で、此処までやるならアームはオルトフォンのせめてRMG-309クラス、出来ればRF297を望みたいし、これらに釣り合いのとれるターンテーブルは従ってガラード301でなければならない。

と云うのが通り相場で、これさえ揃えればレコードは少なくともイコライザーの手前までは良い音で再生出来ると信じられてきた。
事実この事は70%方当たっており後に続くアンプやプレイヤーの性能や設置場所の条件が良ければ、かなり良い音で再生するものだ。

だがしかし、
今迄誰も指摘しなかった事だが、このMC再生に関して僕らは基本的なところで間違えていた。
過去に普段から知ったかぶりの評論家先生の誰一人この間違いを指摘し是正した人は居ないし、
今現在も居ない、評論家ばかりではない、平気でそういうものだと鵜呑みにしていた僕らだって大した耳を持っていなかったという事になる。

それは、またVenetorの平塚ショールームに数ヶ月ぶりにお邪魔した。
新製品のイコライザー付きA/Dコンバータを聴いてみないかというので、いそいそと出向き早速試聴した。

霧が晴れたようなクリアーな音に吃驚吃驚、その理由を尋ねたら、社長曰く。
「MCカートリッジの昇圧は微弱な音声信号を増幅するわけでトランスはリアクタンスという周波数に反応する抵抗分が有るので音が変わる、音が曇ると言われます。ならば入力信号の波形をそのままの形で増幅できれば望ましいのですが、いかんせん増幅するには電源が必要です。

電源部からの歪みが乗っていたら元も子も有りません、本当に微弱な信号なのでIncubation(卵をふ化し手厚く育て上げる)が必要で、NFなんかもってのほか、そのために必要なきれいな電源を電池からであれば簡単に作ることがでます。その考えで作ったのがこれです」とVT-MCTL(MCトランスレス)” を見せられた。

Venetor Soundのスタッフはデジタル専門のハード、ソフトの開発者ばかりと思っていたと言ったら、「私たち下請けで開発していた、医療器、高級デジタル・カメラのアナログ処理はオーディオの比ではない数十倍難しいよ」と社長さん。

兎も角その音を聴き、トランスの(パートリッジ菅野トランス)音と聴き比べ、35年間何の疑いも持たなかった僕のトライアッド・インプットトランスの音も結局正しいとは云えなかった事を実感した。

WEウェストレックスノイマン等々優秀なトランスは沢山あるが是非にもMCTLと聴き比べてみる事をお勧めする。
霧が晴れたような音の差に貴方はきっと涙を流すだろう。今迄自分が信じて大枚を払ってきたものは何だったのかという事にである。

世の中には2000万円クラスのモンスターアンプやプレイヤーやスピーカーが存在するが、
僕はお勧めしない。そんなにお金をかけなくてもほんの僅か2000万円の450分の1程度の投資でレコード音楽はそのお宝同様に享受出来る。その事が一層明確になった。
嘘だと思うならVenetor Soundのショールームで聞いてみるとよい。

話しはそれるが、平塚に来ると、いつも立ち寄る焼き鳥屋さん“とり竹”味は絶品ですよ。
鳥わさ、鳥のたたきなど生ものも絶品、安いし立ち寄っては、試聴ついでに。
2011.02.02